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医療大麻の歴史:古代の起源から現代への展開

人類の大麻草との関わりは、約1万2000年前の新石器時代に中央アジアで始まったとされています。この時代は人間の生活様式が大きく変化した時期で、農耕の開始とともに、大麻は最初に栽培された作物の一つとなりました。大麻の繊維は布、ロープ、紙、建材など様々な用途に使われ、根や葉、花穂は医療や宗教儀式に、種子は食料として利用されました。

特に中国では、神話上の人物「神農」が大麻を含む多くの薬草を研究し、その記録が『神農本草経』として残されています。これは伝統的な中国医学の重要な文献の一つで、神農は大麻草エキスの医療利用を提案しています。さらに、2世紀には大麻草とお酒を混ぜた「麻沸散」という製剤が麻酔薬として使われました。

インドにおいては、紀元前2000年ごろに大麻が伝わり、仏教やヒンズー教の宗教儀式での使用から、赤痢や発熱の治療にも使われるようになります。ヨーロッパでは、大麻は紀元前800年頃にドイツで栽培が始まり、ロシアでは主に繊維用として利用されました。

ルネサンス期のヨーロッパでは、大麻草は印刷革命において重要な紙の原料となりました。また、1538年にはイギリスの博物学者ウィリアム・ターナーが『A New Herball』で大麻草を賞賛し、同じく植物学者のピエトロ・アンドレア・グレゴリオ・マッティオリも大麻草の治療効果について著述しました。

大麻の医療用途は、20世紀になるとさらに科学的な研究が進み、特にその鎮痛効果や抗炎症作用、不安緩和効果が注目されるようになりました。また、がん患者の化学療法に伴う副作用の緩和や、慢性疼痛、多発性硬化症、てんかんなどの治療にも応用されています。

現在、多くの国々で医療大麻の合法化が進んでおり、その安全性と有効性に関する研究は今も進行中です。大麻は古代から現代に至るまで、医療分野で重要な役割を果たしてきたことが明らかであり、今後もその可能性が広がり続けることでしょう。

著作者:macrovector / 出典:Freepik